年を重ねるにつれ、時間の流れが加速しているように感じるのは私だけではないはず。なぜ一年はこうもあっという間に過ぎ去っていくのでしょう......! しかし、そうして「時間が足りない」と嘆く一方で、手元のスマホをだらだらといじっては時間を浪費しているのもまた事実。これってなんだかすごくチグハグな時間感覚です。限りある人生の中で、私たちはどうすれば時間を有効に使うことができるのでしょうか。
そのヒントを教えてくれるのが書籍『あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』。組織のデータ分析や商品開発などをおこなうリサーチャーであり、SNS総フォロワー40万人超のYouTuberとしても知られる佐藤 舞さんが、「時間だけが過ぎる人生」からどう脱却すべきかについて迫った一冊です。
といっても、同書はよくある「時短術」や「効率術」の書籍とはまったく異なります。それよりも、これまでの自分を見つめ直すことで人生のコンパスを手に入れ、より主体的に生きることに主眼が置かれています。
私たちの中には、「なんとなく日々をこなすだけになってしまっている」「やるべきことをしようとするとなぜか邪魔者が入って後回しになってしまう」という人も多いことでしょう。こうした時間の使い方について、佐藤さんは17世紀のフランスの文学者フランソワ・ド・ラ・ロシュフコーの「死と太陽は直視できない」という言葉をあげ、「多くの人は、死と太陽という本質を見ることを避け、代替案として選んだ選択肢を正当化することに時間を使っている」(同書より)と記します。私たちが直視できない本質として佐藤さんが挙げるのが、「死」「孤独」「責任」という3つの理。つまり、普段の生活ではこれらを忘れていたほうが都合がよいため、無意識に自分にウソをついて生きることに時間を使っており、それこそが人生の浪費の正体だというのです。
では、逃げられないこれらの苦痛や不安とどう付き合っていくのがよいのでしょうか。同書では、リサーチャーならではの豊富なデータや情報の分析から、人生の向き合い方と処方箋を教えてくれます。また、そこからどのように自分の価値観を見つけ、それに沿った目標設定を作ればよいかも丁寧に解説。途中、自身で記入するワークなどもあるので、実践すればより自分ごととして考えられそうです。
ベストなのは、読み終える頃には自分にとって本当に大切な価値観を見つけ、人生に主体的に関われるようになっていること。けれど正直、一度でそれを達成するのはかなり難しいかと思います。佐藤さんいわく、「本書は、あなたの人生を、より有意義なものにするためのコーチングブックとして機能します」(同書より)とのこと。折にふれ、何度も読み返して自分に落とし込んでいくのがよさそうです。同書は道に迷ったときに取り出したい、人生の羅針盤のような一冊になることでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]