活字に魅了されたのは、20代になってから。「こんなにも面白い世界があることを知ってからは、休みの日は書店に足を運ぶようになりました」[撮影:蜷川実花/hair & make up 大島智恵美/styling 横田勝広(YKP)/costume Bottega Veneta]
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 ソロとして、グループとして、多忙を極めるKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔。自身の転機となった出来事と「ずっと変わらない望み」を語った。AERA 2024年9月23日号より。

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――アイドル、俳優、番組MCとして忙しい日々を送る。自身にとって、「転機」となった出来事はあるのだろうか。

 最近で言えば、コロナ禍は一つの転機となりました。一時的にスケジュールが白紙となったため、「忙しくて本も読めない」といったことも口にできなくなった。「忙しい」という言い訳が通用しなくなったんですね。

 仕事の予定が見えない状況に不安も覚えましたが、一方で時間に追われない、という利点もありました。毎晩寝る前に「仕事はいつ再開するのだろう」と不安になりつつも、「よくよく考えれば、いつ寝ても、いつ起きてもいいんだよな。明日はスーパーに行ってみようかな」と思考が自由になった気がします。実際、スーパーにも頻繁に足を運ぶようになり、料理も始めたんですよ。冷凍ご飯を解凍することくらいしかできなかったけれど、幼い頃から好きだったドライカレーのレシピや味噌汁のつくり方を母に聞き、自分でも作ってみたんです。心に余裕ができ、「料理って面白いな」と感じるようになりました。

――仕事に対する向き合い方も変わっていった。

 毎年ライブを開催できる状況に感謝をしていたつもりでも、「完全にストップする」という想像をしたことはなかったので、「当たり前はないんだ」「いまこの瞬間を楽しまないと」という気持ちは一層強くなりました。ライブにしても、ちゃんと誰かの記憶に残ることができるよう、その時々に最大限の熱量でできることをしていきたい。メンバーに対しても「明日、伝えればいいや」ではなく、「思ったことはいま口にしなければ」と考えるようになりました。

――自分自身と対話をするよう心がけるようになったのも、この頃からだという。

 一度立ち止まってみたことで、以前のようにお仕事を詰め込むことができなくなったかもしれません。20代の頃の自分のキャパシティーとは異なるうえ、余裕がなければ心が動かなくなってしまう。どこかに“遊び場”がないと、心がガチッと固まってしまい、完全にキャパオーバーになってしまうんですね。

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