プロ野球のペナントレースもいよいよ最終盤。この時期になっても上位4球団が6ゲーム差にひしめき合う混戦模様のセ・リーグにあって、最下位の中日とともに蚊帳の外に置かれている感のある5位ヤクルトだが、今シーズンはレギュラーとして大きな成長を見せている選手がいる。22歳の遊撃手、長岡秀樹だ。
千葉・八千代松陰高からドラフト5位で2020年に入団した長岡は、3年目の2022年から一軍で正遊撃手に定着。5年目の今シーズンはここまで全試合にショートでスタメン出場してチーム最多、リーグ2位の145安打を放っている。一時は3割台に乗せていた打率はここへ来て下がってはいるものの、それでもリーグ9位の.283は立派な数字と言える。
レギュラーとなった2022年は堅実な守備でゴールデングラブ賞に輝く一方、打っては主に8番打者として打率.241、9本塁打、48打点。翌2023年は打率.227、3本塁打、35打点。持ち味のフルスイングで左打席から右方向に強く引っ張る打撃は、傍目には強引に映ることも多かったが、今シーズンはそれが目に見えて変わった。
「シーズンに入ってから左(投手)の打率は良かったのに、右(投手)の打率が悪かったんです。それで4月の終わりぐらいかな、本人に聞いたら『左の時はいいけど、右になると引っ張りたくなる』っていうから『そんなことしてたら(打)率は残んないよ』っていう話をして『どうしても打ちたいんやったら、ピッチャーに向かって170キロの打球を打て』って言ったんですよ。そこから本人の意識が変わったんだと思います」
そう話すのはヤクルトの大松尚逸打撃コーチである。現役時代はロッテを経てヤクルトでもプレーした大松コーチは、BCリーグ(独立リーグ)の福井ミラクルエレファンツで引退したのち2020年に二軍打撃コーチとしてヤクルトに復帰。この年、高卒ルーキーとして入団してきたのが長岡だった。大松コーチが一軍に昇格した2022年、新型コロナウイルス陽性判定を受けた主砲・村上宗隆に代わって春季キャンプの一軍メンバーに抜てきされた長岡は、前述のとおりショートのレギュラーに定着する。つまり2人は長岡のプロ入りからずっと“師弟”関係を続けてきたことになる。