「僕は(ゴロを)捕ったらすぐ(球を)離しちゃうっていうか、回転しないで投げちゃうっていうのをモリさん(森岡良介内野守備走塁コーチ)からずっと言われてて、キャンプから回って投げる練習はしてたんです。ただ、やっぱりゲーム(試合)でやらないと身に付かないっていうのがありながら最初はできなかったんですけど、そういう打球が来たのをきっかけに一度回って(投げて)みたらすごくいい球が行って、それからですね」
長岡が言うように、こうしたプレーができるようになったのもそれまでに地道に練習を積んできたからこそ。現役時代は自身もヤクルトで正遊撃手を務めた経験のある森岡コーチも「あれはだいぶデカいですね。今までやったら回転せずに投げてたヤツをしっかり回転して投げて、強い球(送球)を投げれるようになってきたんで、それは大きいかなと思います。秀樹はそもそも大事にいくタイプで、今まではその選択がなかったと思うんですけど、ある程度大胆にプレーできるようになってきましたね」と目を細める。
バットでは7月28日の広島戦(神宮)、土壇場の9回裏2死二、三塁の場面で守護神の栗林良吏から左中間へ逆転サヨナラ二塁打を放ち、連盟表彰の「スカパー!サヨナラ賞」を受賞。1番もしくは2番がほぼ定位置となった8月は月間.384のハイアベレージを叩き出し、しばらく3割を切っていたシーズン打率を再び“大台”に乗せてみせた。
今月26日でようやく23歳とまだ若く、身体の強さにも定評のある長岡も、ここまで全試合スタメン出場というのはプロ5年目で初めて。疲れも出てくるこの9月は成績を落としていたが、18日の広島戦(神宮)では第4打席のタイムリーヒットで貴重な追加点をもたらし、試合後のヒーローインタビューで「今年も(残り)12試合しかないんで、全力で頑張るだけだと思います」と口にした。
ヤクルトの歴史を紐解いても、シーズン全試合に遊撃手としてスタメン出場したのは池山隆寛(1988、90、91、95年。現ヤクルト二軍監督)と宮本慎也(2000、03年)だけ。残り12試合で球団史上に燦然と輝く2人の偉大な先輩に次ぐ“勲章”を手にして、不動のレギュラーからさらには日本を代表するショートストップへ──。その前途は眩いばかりの光に満ちている。(文中の今季成績は9月18日終了時点)
(文・菊田康彦)
●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。