「打ってるボール、打ってるカウントは悪くない。ちゃんと甘いボールをいいカウントで打ってるのは間違いないけど、打ってる場所(方向)が良くないから凡打になる。それも右方向へのゴロばっかり。分かりやすいじゃないですか? だから本人は強く打ちたい、『170キロの打球を引っ張って打ちたい』って思ってたのを『強く打つのはいいから、センター(の方向)に打て』ってことですよね、僕が言ったのは」
今年の4月にはドジャースの大谷翔平が、ブルージェイズの菊池雄星(現アストロズ)との対戦で自己最速となる時速192キロの打球速度を記録して話題となったが、その大谷でもシーズンの平均は154キロ。実際の数値というよりは意識の問題だとしても、身長175センチ、体重82キロの長岡が引っ張らずに170キロの打球速度を出すのは簡単なことではないように思える。本人はいったいどのような意識で打席に入っているのか──。
「本当にタイミングが合ってセンター方向にしっかり打たないと、なかなかそれに近い数字って僕の力では出ない。それぐらいセンターにっていう意識は強く持ってます。もちろんセンターに向かって打ちにいく中で引っ張るときもありますし、逆方向にいくときもあるし。センターに(打ちに)いって(結果的に)打球がバラけるっていうイメージですね」
センター方向にできるだけ強い打球を打とうと意識して、結果的に「バラけて」広角に安打が出るようになれば、自ずと打率は上がる。5月は月間打率.323をマークすると、4月23日の時点で.234だった打率は恒例のセ・パ交流戦を前に3割の大台に乗り、開幕戦で8番だった打順も主に2番、3番を任されるようになっていた。
もっとも今シーズンの長岡の成長は打撃に限った話ではない。2022年にゴールデングラブ賞を獲得した守備でもさらなる進化を遂げている。9月6日の阪神戦(神宮)でもあった、二遊間を抜けようかというゴロに追いつき、身体を左に回転させながら一塁に送球してアウトにするというダイナミックなプレー。これなどは、昨年までは見られなかったものだ。