近藤さんは男女の役割について、時代が変わってきていることを前置きしたうえで、こう指摘する。

「家庭で、“伝統的な女性”としての役割を押し付けられたり、夫からのプレッシャーがあったりと厳しい環境で生きてきた女性は、死別による悲嘆はあるものの、同時に『自由』を手に入れます。それまでのコミュニティーだけではなく、外に出て新たなつながりを作ることができるため、生きがいを持てて、助け合いなどの社会的サポートを失うことが少ないのだと思います」

 男性の孤立・孤独は、死別に限らない問題だ。

 最近、定年後の「おじさん」について、友達がいない人が多いという問題が指摘されることもあるが、男性は定年後も仕事の肩書を捨てられない人が少なくないという。

山岳会では「ただの山好きのおっさん」

「『男らしく頼もしい存在であれ』『弱音は吐くな』といった育てられ方をしたのが原因なのかもしれません。新たなコミュニティーでも頼もしい存在だと思われたいため、『武器』のように過去の肩書を出してしまうのかもしれません。結果、ただ嫌われるだけなんですよね」(近藤さん)

 社会人山岳会に参加している近藤さんは、そこでは大学教授でも医師でもなく、「ただの山好きのおっさん」を通している。仕事の義務感からも解放され、普段は話せないようなさまざまなことを相談しあうことができるのだという。

 ただ、近藤さんは複数のコミュニティーを持っておくことの重要さを説きつつも、「コミュニティーに入りなさい、と男性を諭しても意味がない」と指摘する。重要なのは、コミュニティーに参加しやすい社会の環境づくりだ。

 豪州で始まった「メンズ・シェッド」(男たちの小屋)と呼ばれる、孤独な男性たちが集うものづくりの施設がある。英国などに広がり、日本にも登場している。作品を販売し、収益を運営費に充てるなどの取り組みをしている。ものづくりの過程で教え合いが生まれ、人のつながりができる。

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「お茶会」に参加するのは男性より女性