結婚したパートナーに先立たれた場合、女性より男性の方が、その後の余命が短いというデータがある。「後を追うように亡くなってしまう」形だが、なぜ男性はその傾向が強いのか。専門家は、高齢男性が陥りやすい「社会的孤立・孤独」が背景にあると指摘。早期からの「つながり作り」の重要性を説く。
【データ】年齢によってまったく違う「孤独感」。1位となった年代は?
医師で京都大学の近藤尚己教授(社会疫学)は、過去にハーバード大学の学生たちと、パートナーと死別した人はパートナーがいる人に比べ、その後に亡くなる確率がどれだけ高くなるかについて研究した。ちなみに、社会疫学とは、社会が健康に与える影響をひもとく学問だ。
研究の結果、パートナーとの死別から6カ月以内に残された側が亡くなる確率は、パートナーがいる人が死ぬ確率より1.41倍高く、6カ月以降でも1.14倍高いことが分かった。
男性は23%、女性はわずか4%
さらに、男女別でみると男性は亡くなる確率が23%も高くなるのに対し、女性はわずか4%。「後を追うように死んでしまう」のは、女性より男性が圧倒的に多いという結果が出た。
死別に「強い」女性と「弱い」男性。なぜこうした傾向が出ると考えられるのか。
「男性は女性に比べて所属するコミュニティーが少ないと言われており、孤立しがちになってしまうことが大きな要因だと推察されます」
近藤さんはそう説明し、孤立や孤独ほど健康にリスクをもたらすものはないと力説する。
「『濡れ落ち葉』という、定年後の夫が妻にくっついて離れない現象を表す言葉がありますが、コミュニティー作りが苦手な男性は、定年後、妻に依存した生活を送ってしまいがちになると言われています。妻の背中にペタッと張り付いた夫は、妻に先立たれると家に閉じこもるようになり、どんどん不健康な生活になっていってしまうケースがあるのです」
健康は、いきいきと人生を過ごすための「手段」だ。妻がいたときのように、喜び合い、支えあうこともない。そんな生きがいのない人生なら、健康は重要視されない。大酒を飲んだり、たばこも増えたり、食事もいい加減になったりする。