「会社を休む際に電話連絡を必須とするのは、古い文化です」
そう語るのは、これまでに400以上の企業・自治体・官公庁等で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、時代遅れな体質をもつレガシーな組織には共通する文化や慣習、空気感があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変えていけると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな体質」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「電話連絡の強制」が組織体質に及ぼす悪影響について指摘します。
電話以外の欠席連絡が咎められる組織
突然の休暇取得や欠席の連絡をする際、電話連絡が必須の組織もある。
たしかにひと昔前であれば、電話でマネージャーあるいは職場の仲間に連絡するのが一般的であっただろう。今では職場で利用しているSlackやTeamsなどのチャット機能、あるいはメールで連絡を入れることもできるが、そういったやり方に異を唱える人たちもいる。
「チャットやメールで軽々しく済ませるな。当日の欠席は重要な連絡なのだから、上司と直接話をするべきだ」
このような一家言を持つ人もいる。
また本人の体調を把握するためなど、健康管理上の理由からやはり口頭で話を聞いたほうがよい、話しぶりや声の様子などを伺うべきだと言う人もいる。この点については合理性も理解できる。
体調不良時の電話連絡はなかなかつらい
一方で、つねに健康体の人(あるいは体調不良を気合い・根性でカバーしてしまう人)にはわかり得ないかもしれないが、体調がすぐれないときに電話をかけるのは思いのほかかったるい。しかも、電話をかけたところで相手が出てくれるとは限らない。
「沢渡課長は出社されていますか?」
「今は席を外されています」
「……では、またかけ直します」
このやり取りと、その後のかけ直しも相当しんどい。折り返し電話をかけてもらうにしても、病院に行くために車を運転していたり、診察室や待合室で待機していたりと、咄嗟の電話に出られない場合もある。
さらには電話がつながったとしても、「本当に体調が悪いのか?」「午後からは出られるのか?」「今日予定している仕事はどうするんだ?」など追及される可能性もあるだろう。
電話で連絡する際のあらゆる心理的障壁の高さが、体調不良でも休みにくい空気を醸成してしまう。「とやかく言われるくらいなら、少しくらい無理してでも会社に行こう」となる。
ひいては、上の顔色だけを見て無理をする組織体質が助長されてしまう部分もあるだろう。
何と言われようがチャットやメールで連絡する
時間や場所の制約なく用件を伝達できるチャットやメールは、自身や家族が体調不良である人にとって優しいコミュニケーション手段と言える。今やビジネスのコミュニケーション手段として立派な地位を確立しているチャットやメール。使いこなさない道理もない。
会社を欠席する際は、誰に何と言われようが、少なくとも最初の連絡はチャットかメール。強い意志を持ってそれを断行しよう。
小言を言われそうなら、次のような一言を添える。
「体調が悪く、電話の連絡がしんどいためチャットで連絡しました」
「家族を病院に連れていくため通話ができず、メールで連絡しますね」
この一言があるだけでも、チャットやメールで欠席連絡を行う合理性を堂々と示すことができる。
もちろん、声の状態で健康状態を把握したいなどの要求を受けた場合は、時間を置いて通話するなど柔軟に判断して行動しよう。
誰かが始めれば、かつ合理性を説明すれば、少しずつその行動が浸透してくることもある。まずはあなたから、始めよう。
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)