次に新NISAで人気の「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(以下、オルカン)と、同「米国株式(S&P500)」について。オルカンは8月5日に前営業日比マイナス4.9%、基準価額にして1207円下がった。S&P500はマイナス4.5%、1318円の下落だった。8月8日には大手金融ベンダーが「オルカンとS&P500から数百億円が解約/新NISA開始以降、オルカンから1日で1億円以上流出するのは初」と報じ、SNSで拡散された。
実際にいくらの解約があったか、eMAXIS Slimシリーズを運用する三菱UFJアセットマネジメントに聞くと、正確な回答があった。
「8月5日の申し込みが計上される8月7日の数字でオルカンが解約209億円、純流出(当日の売りと買いを差し引きした金額)は77億円。S&P500は解約326億円、純流出221億円となりました」
解約だけだと合計535億円、純流出合計は298億円。数字だけ聞くとかなり売られたイメージである。だが、三菱UFJアセットから出た次のコメントにより印象は変わるはずだ。
「このときのオルカンの前日純資産総額は3兆5338億円で、解約額を『率』で見ると0.59%、純流出は0.22%。S&P500の前日純資産総額は4兆5593億円で解約率は0.71%、純流出率は0.48%です」
ほぼ売られていない
どれをとっても1%にも満たないのである。「8月5日の暴落でほとんどの人は売っていない」。これが事実だ。そして先ほど示した解約と純流出の差額を見ると、下落で買いを入れた人も確実にいたことがわかる。
三菱UFJアセットは8月8日付で「オルカン、S&P500に投資されているみなさま」に向けた「お知らせ」を出した。そこには長期投資を応援する内容が書かれていた。その理由を聞くと、こう返ってきた。
「新NISAで投資を始めた方は多いと思います。これまで、株価の上昇が続き下落局面はほぼなかったことから、不安を感じられた方も多かったと思います。そのような方々に向けて、長期投資に対する考えや心構えなどについて、お知らせの形で情報を発信いたしました。今後も、投資家のみなさまの長期投資に寄り添えるよう努めます」
(経済ジャーナリスト・向井翔太/編集部・中島晶子)
※AERA 2024年9月16日号