鈴木英之さん(すずき・ひでゆき)/SBI証券投資情報部長。大学卒業後、日栄証券(現SBI証券)に入社。営業部、調査部、株式部などを経て現職(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 1日で4451円も下がり、翌日に3217円も上がった日経平均株価。「損切り民」は本当に多かったのか、正確なデータを元に検証する。AERA2024年9月16日号より。

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 今年7月11日に場中高値4万2224円(終値/以下同)をつけた日経平均株価が8月5日に3万1458円まで下がった。前営業日比4451円の暴落。テレビやネットでは「史上最大の下落幅」「ブラックマンデー以来」という二つのキーワードが目立っていた。

 いったん冷静に整理しておきたい。4451円が史上最大の下落幅であることは間違いないが、7月は日経平均4万円台だったわけで、「幅」はどうしても大きくなる。1日の「下落率」で見るとマイナス12.4%で、史上ワースト2位。ワースト1位は1987年10月20日のブラックマンデー、マイナス14.9%だ。この日の日経平均株価は2万1910円だった。

 なお、暴落翌日(8月6日)の日経平均は3217円も値上がりした。「上昇幅」は史上最大。「上昇率」は10.23%で史上4位である。ちなみに上昇率1位は08年10月、リーマン・ショック後の14.15%。

売りが売りを呼んだ

 8月5日に慌てて現物株を売った人は、どのくらいいるのか。主要ネット証券で預かり資産最大手のSBI証券にデータを検証してもらった。同社投資情報部長の鈴木英之さんは語る。

「8月5日は月曜日でしたが、前営業日の8月2日に日経平均は2216円、値下がりしています。8月2日と8月5日の両方を見てみましょう。まず、課税口座(特定+一般)はどちらも売り越しで、売りが買いの1.1〜1.2倍。思ったより少なく感じました。課税口座は信用取引も含まれますので、株価水準から強制的に売却させられてしまう面もあります」

 損が拡大したため慌てて売った人もいただろうが、リスク管理で現金を手元に置くために売ったケースもあるという。8月2日の下落が導火線となり、8月5日に追い証がらみの取引(信用取引で一定以上の損失が発生し、追加証拠金を入金しないと強制決済)も増えた。売りが売りを呼んだ展開。

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「みんなが(売っている)」には何の根拠もない