今回の件で、思い出したのが、2018年のサッカー・W杯での本田圭佑選手(当時)の対応だ。本田選手は、テレビのインタビューで「清々(すがすが)しい」を「きよきよしい」と誤読してしまい、それが、SNS上で突っ込まれていた。

 これに対し、本田選手自身はTwitter(現X)で「お恥ずかしい。漢字が苦手で。でも、もうしっかり覚えました」と投稿した。

 自分の誤りを素直に認め、学ぼうという姿勢を示したことで、本田選手の好感度はむしろ高まったと言える。

 政治家で言えば、故・小渕恵三氏もメディア対応をうまくやっていたように思う。小渕氏は、首相就任前後には「凡人」「冷めたピザ」などと揶揄されていた。

 しかし就任後はそれを逆手にとって記者に温かいピザを出したり、言葉足らずであるという批判に対して「ボキャ貧だからな、おれは。ボキャブラリーが貧困だからいい言葉がなかなか出てこない。お疲れ様の一言だ」と発言したりして、最終的には好感度を上げることに成功した。歴代の首相と比べても、「愛される首相」であったと言えるだろう。

 小泉議員に話を戻すと、2019年に開催された国連の気候変動サミットでの発言あたりから、メディアで叩かれることが多くなっている(ちなみに、この年にアナウンサーの滝川クリステルさんと結婚され、注目を浴びている)。

 最近では、小泉氏の独特な言い回しは「ポエム」「進次郎構文」と呼ばれ、インターネットミーム化(ネット上で人々が模倣して広がっていくネタ要素の強い文章や動画、画像のこと)に至っている。

 だいぶ前のことになるが、筆者は小泉議員の講演を直接聞いたことがある。現在メディアで報道されているのとはだいぶ異なり、非常に明晰でカリスマ性のある人物だという印象を受けた。「いずれ、この人は総理大臣になるんだろうな」と思わずにはいられなかった。

 筆者の当時の印象が正しいか、メディアの報道が正しいかはさておき、少なくとも「知的レベルが低い」と言われるような人物ではないことは、今回の切り返しから見ても確かではないかと思う。

メディア対応で評価を下げる人のほうが多い

 メディア対応をうまくやって評価を上げる人が少なからずいるのは事実だが、むしろ対応を誤って評判を下げてしまう人のほうがはるかに多い。

 政治家で言えば、森喜朗氏が代表的だ。筆者は森氏とは直接面識はないのだが、東京五輪の関係で、森氏と一緒に仕事をしていた人たちは、口を揃えて「森さんは有能な方だ」と言っていた。メディアの報道と、直接仕事をした人の評価が180度異なることに驚かされた。

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