AERA 2024年9月16日号より
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 物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年9月16日号より。

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 52平方メートル1億円、83平方メートル2億5千万円、150平方メートル6億円。

 週末、新聞に折り込まれた不動産広告を見ながらため息が出る。東京の特に都心部では恐ろしいほどマンションの価格が高騰していて、その余波がじわりじわりと周辺部や地方都市へと広がっている。

 不動産市場が活況で景気が良くなっているという人もいる。これは本当にいいことなのだろうか?

 東京23区の今年7月の中古マンション価格は1年前より7.4%上昇しているそうだ。知り合いの不動産業者によると、立地のいいマンションによっては新築時の倍になっているところもあるという。価格水準が日本人には手が出せないレベルになっていて、彼が最近売ったマンションは10組内見が入ったそうだが、その全てが中国や台湾のお客さんだったそうだ。僕らは円建ての価格で見ているから高騰しているように感じるが、ドル建てでみるとそれほどでもないのだ。

 ドル円レートはこの4年で100円強の水準から160円前後にまで駆け上がった。マンション価格が1億円から2億円に上昇しても、100万ドルだったものが125万ドルに上昇しただけにしか見えない。

 元々、東京の不動産は世界的に見て安いと言われていたことに加えて、対中関係が緊迫化していることなどから、台湾の富裕層たちが有事に備えて東京のマンションを買っているそうだ。

 価格上昇の原因はそれだけではない。その高騰ぶりを見て、マンション投機で儲けてやろうとする人たちが、まだ値上がりしていない物件を探して周辺部へと食指を動かしている。

 不動産価格が上昇することによって本当に住みたい人が住めない状況になっている。そもそも価格が上昇することはいいことなのだろうか? 1990年に不動産バブルが崩壊したときも「○○兆円の富が失われた」と言われた。しかし、安くなることで土地やマンションを購入できるようになった人もいたはずだ。

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