田内学(たうち・まなぶ)/1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

 富とは一体何なのだろう。

 土地やマンションの根源的な価値は、生活の快適さというところにあるのではないだろうか。何もなかった土地に、水道や道路などのインフラが整備されれば、人々が暮らせるようになる。さらに鉄道が敷かれて、駅の周りに商店街ができれば、ますます便利になり土地の値段は上がっていく。みんなが便利だと思う土地は、みんなが欲しがるから結果的に値段は上がる。

 しかし、その逆は成り立たない。土地の値段だけ上がっても便利にならないし、値段が下がったといって、急に不便になるわけではない。

 安いうちに買って高く誰かに売ろうとする人たちが増えても、生活が良くなるわけではない。バブル経済の崩壊から学ぶべきは、不動産の本質的な価値に目を向けることだ。価格だけ上がっても意味がない。「価格=富」と考えるのではなく、本当に必要な人が住める環境を作ることこそが重要だ。

 シンガポールでは外国人が不動産購入をする場合には60%の税金をかけたり、2軒目を購入する国民に20%の税金をかけたりしている。

 日本でも、価格上昇を抑えるための方法を考えた方がいいのではないだろうか。

AERA 2024年9月16日号

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