費用負担で揉めるケースも

だが、基本的に、2のオーナー都合で解約はできない。サブリース契約では、オーナーが貸主、サブリース会社が借り主となるが、借地借家法では借り主の権利が強く保護されるため、貸主であるオーナーの立場が弱い。

 さらに3の原状回復とリフォーム費用はオーナーが負担する。だが、業者選定や工事内容はサブリース会社が決めるケースも多く、見積もりが多額になり、費用負担で揉めるケースも少なくない。契約時に費用負担を把握しておらず、数年後に請求が来てトラブルになったという事例もあるという。

 こうしたトラブルの多発を受け、2020年、“サブリース新法”とも呼ばれる「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行された。トラブルを未然に防ぐための取り組みが強化されたものの、「説明を受ける側(購入者)に十分なリテラシーがなければ見逃してしまうことも多く、本質的な解決にはなっていない」と中城教授は言う。

オーナーが搾取される構図

「ワンルームマンション投資に手を出す若い会社員の多くが、賃貸経営の素人。つまり貸主となるオーナーより、借り主となるサブリース会社のほうが、不動産の知識がはるかに上回ることがほとんどです」

 そうすると、何が起こるのか。

「いまの借地借家法は、借り主の権利が強く保護されているため、貸主であるオーナーの立場が弱い。法律を逆手にとってオーナーが搾取されてしまう構図が生まれています。賃料減額やサブリース会社の倒産など、収入が減ったり途絶えたりするリスクがあることも認識したうえで、検討すべきです」(中城教授)

 ワンルームマンション投資のみならず、不動産投資には空室リスクや、次の投資家に想定する価格で売れるかという売却リスクなどもつきまとう。

「投資はギャンブルではありません。想定通り事業が進まない場合、一定の損失で撤退できる出口戦略が必要です」(中城教授)

(ライター・松岡かすみ)

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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