家賃収入と売却の二本柱
物件の入居者からの家賃で毎月のローンを返済し、残債が少なくなった段階で物件そのものを売ると、不動産評価に応じた売却益が得られるという仕組みだ。つまり、ローン返済分を除いた月々の家賃収入と、売却したときの額面が、利益2本柱になる。
不動産投資に関する意識調査(野村不動産、2023年)によれば、「1年後、不動産価格はどうなると思いますか」の質問に対し、「上がる」と答えた人が37.9%、「横ばいで推移する」と答えた人が42.1%。合わせて実に8割の人が、現状の高騰感や高止まりが続くと予測している。「上がる」と予測する理由には、物価高に加え、世界の主要都市との比較で日本は割安という声もある。
家賃に上乗せは難しい
だが、空前のマンション高。特に都内ではワンルームマンションの価格も上昇傾向にある。物件価格の上昇は、投資家にとっては利回りが低下することと同義だ。物件の購入価格が上がっても、それを家賃に転嫁するのが難しいためだ。
「ワンルームマンションの借り主は単身世帯や学生などが多いため、支払い能力に限界がある。物件の購入価格が高くなったからといって、家賃を上げづらい。物件の上昇幅に家賃が追いつけないのが現状です」(中城教授)
月々の家賃収入よりローンの返済額が上回る「マイナス収支」に陥るケースもある。だが、管理費などを含めた毎月の収支は赤字でも、売却の際にマイナス分も取り返せることを期待して、支払いを続けるケースも多いという。
家賃引き下げや修繕費がかさむリスク
だが、リスクも付きまとう。最初は多少のマイナスでも、長期間保有するなかで物件が古くなって家賃を下げる必要に迫られたり、管理費や修繕費が高くなったりして、その幅が大きくなることも想定される。
マイナス収支が膨らんで家計がひっ迫し、急いで売却しようとすれば、安い価格でしか売却できないこともある。結果としてローンの残債を下回り、全体がマイナスになる恐れもあるなど、大きなキャピタルロスにつながりかねない。
「なにも起きなければ、『資産形成ができてよかった』ということになりますが、マイナス収支を前提とするなら、金額が大きくなっても負担できる余力があるかを確認しておくことが必要となります」(中城教授)