田内学(たうち・まなぶ)/1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

 実際に、その費用が払えずに新紙幣対応の機械を導入できていないところも多い。3年前に導入された新500円玉でさえもいまだに使えない自動販売機があるくらいだ。そもそも偽造防止のために硬貨を新しくしたのに、機械が読み取れないのでは全く意味がない。

 ここには、そうした機械の生産が追いついていないという問題もある。お金さえあれば機械が手に入るわけではなく、1.6兆円分の機械を作ったり運んだりするには大量の労働力も投入されている。

 別に新紙幣導入を否定しているわけではないが、GDPや経済効果という表面的な数字にだけ注目して、無駄な仕事や無駄な出費が強いられていることに気づかないことは多々ある。このままだと僕らはどんどん疲弊してしまう。

 労働力不足が深刻化していく日本においては、無駄な仕事は減らさないと立ち行かなくなる。表面的な数字に踊らされることなく、その経済活動によってどれだけ、僕たちの生活が豊かになっているのか、その中身を考えなければいけないだろう。

 8月15日に発表された4−6月期の実質GDPは年率換算で3.1%増加(季節調整値)。これは、生活が豊かになっていると思っていいのか、それとも無駄なお金を払わされているだけなのだろうか?

AERA 2024年9月9日号

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