新築マンションの高騰に伴い、都市部では中古マンションの高騰も顕著だ。もはや中古でも「億ション」が当たり前になりつつある。10年前に買ったマンションが3倍以上になっているエリアもある。AERA&AERA dot.の合同企画。AERAでは 2024年9月9日発売号(9月16日号)で特集します。
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シリーズ前回はこちら〉〉【注目】「200億円」マンションの衝撃 高騰とまらぬ都心の不動産 23区は平均1億円超え
1億2276万円。不動産調査会社の「東京カンテイ」が公表した、7月の都心6区(千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷)の中古マンションの平均価格(70平方メートル換算)だ。昨年2月に1億円を超え、18カ月連続で上昇し、過去最高の水準が続く。
区別で見ると、最も高かったのは千代田区の1億6859万円。続いて、港区(1億5874万円)、中央区(1億2514万円)、渋谷区(1億2350万円)と、都心6区のうち四つの区が1億円超えだった。
中古マンションがここまで高騰したのはなぜか。
「1988年、89年の頃にそっくりです」
そう話すのは、東京カンテイ上席主任研究員の井出武さんだ。
80年代後半、バブル経済下で地価が急激に高騰し、投資目的で買い手が中古マンションに殺到した。令和の今も、投資マネーが中古マンションに強く流れ込こんでいる、という。
「特に新型コロナウイルスのパンデミックが続く中、2020年に株価が1万8千円程度にまで大暴落しましたが、不動産、特にマンションは微動だにしませんでした。そこで中国や台湾、シンガポールをはじめ、国内外の富裕層や投資家が、マンションへの安心感を持つようになりました」
しかも今、建築コストの増大などで新築マンションは供給数が減少している。そのため、中古マンションに目が向いているという。
都心6区に強くマネーが流れるのは、「絶対的な価値への安心感」(井出さん)。都心6区の中でも千代田区、港区、渋谷区は「都心3区」と呼ばれ、さらに投資の対象になっていると話す。
「都心3区に共通するのが、高級住宅街を持っていることです。千代田区は、番町や麹町。港区は麻布や赤坂、青山など。渋谷区にも松濤や代官山などがあります」
不動産市況の調査・分析を行うアットホームラボ(東京)のデータマーケティング部長・磐前淳子(いわさき・じゅんこ)さんは、こう話す。
「都心6区は、外国人投資家や富裕層といった、いわゆる実需以外の購入意欲が非常に旺盛です。彼らの多くは、将来の売却や賃貸を視野に入れているため、立地や交通のアクセスを重視し、気に入った物件があれば『即決』でいくらであっても買う。それが価格の押し上げにつながっています」