――ネスレ日本では、タレント起用について社長が判断をしていたのですか?
一流の外資系企業なら、広告は社長案件です。100億円も200億円も使う事案を、宣伝部長だけに任せるわけにはいきません。私の場合、芸能事務所の人と直接話をして、食事もして、個人的な友人になるところまでいって、この人は大丈夫だと信頼できた事務所や、タレントさんとだけ仕事をしてきました。
ジャニーズに限らず、芸能界はもともと物騒なうわさが多い世界ですから、慎重になって当然です。
ただ、これは何も芸能界に限った話ではありません。東京五輪のスポンサー依頼があったときは、元電通の高橋さん(大会組織委員会元理事の高橋治之氏。昨年、受託収賄容疑で逮捕)の汚職のうわさが耳に入っていたし、ネスレ本国のスイスからは、IOCが賄賂を受け取っているといううわさを聞いていたので、すべて断りました。
――広告業界では、ジャニーズのタレントを起用すると手っ取り早く商品が売れる、という定説があったようですが、その人気を魅力に感じることはありませんでしたか。
そんな定説、うそでしょう。だって、大手菓子メーカーでジャニーズを起用していないのは我々くらいなのに、ネスレのキットカットは日本で最も売れているチョコレート菓子ですよ? ジャニーズのタレントを使ったからヒットしたという商品があるなら教えてほしいです。なぜ、証明されていないことを、みんな当たり前のように言うのか不思議です。