「PTAや自治会でも似たような活動をしているのに、なぜ『おやじの会』が必要なのか」と問いかける司会の沼上弦一郎さん(右)=神奈川県藤沢市、米倉昭仁撮影

「できるときに、できることを」がモットー

 PTAは主に在校生の保護者で構成されるが、おやじの会では子どもが卒業した後も活動を続ける人が少なくない。完全なボランティア制で、「できるときに、できることを」がモットー。「おやじの会」の名がついてはいるが、メンバーには女性もいる。

 ディスカッションで、おやじの会には別の、「裏の目的」もあると話したのは、東京都町田市立町田第一小学校「お父さんネットワーク」の北村直己さん(46)。それは「子どもをきっかけに地域に入る」ことだ。

「ぼくらの世代の定年は65歳、70歳で、それまで働かなければならない。でも、自治会長から『その年になってからこられても困るんだよ』って言われます。もちろん冗談ですが、実際、65歳、70歳になって地域に入ろうと思ってもなかなか難しい」(北村さん)

 母親であれば、子どもが通う幼稚園や学校でママ友をつくり、その広がりで地域との縁ができやすい。しかし、父親は仕事中心になりがちで、地域コミュニティーとの接点はできづらい。

「男って格好をつけたがるじゃないですか。『自分からは地域の輪の中に入らないぞ』みたいな」(同)

 そういう心理を抱える男性にとっても、おやじの会が地域に入る「きっかけになればいい」という。

「おやじの会は本当に必要?」と、問いかける藤沢第一中学校おやじネットワーク代表の沼上弦一郎さん(右)=神奈川県藤沢市、米倉昭仁撮影

じいちゃんになっても遊べる仲間を

 もう一つ、北村さんが大切に思っているのが、おやじの会の「飲みニケーション」だ。

「飲みに行ったとき、たとえば『実はうちの子は不登校なんだ』と話をする。問題の解決には結びつかないけれど、『話をしてすっきりした』ということは結構ある。自分も『心の平穏』を保つために、おやじの会に参加しているところはあります」(同)

 じゃんけんおじさんこと、福島さんも、男性の居場所としてのおやじの会に注目している。

「65歳、70歳まで仕事をして、地域に帰ってきましたが、友だちはいません。じゃあ、その後の人生どうするの、ということです」(福島さん)

 福島さんは、おやじの会の代表をしていたとき、「子どものためにおやじの会に入りませんか」とは、あまり言わなかった。その代わり、「定年後の飲み友だちが欲しくないですか」「じいちゃんになっても遊べる仲間をつくりませんか」と声をかけた。

「そういう勧誘の仕方は、たぶん、おやじの会じゃないとできない。ぼくはおやじの会は本当に必要だと思っています」(同)

「定年後の人生をどうするのか」と、問いかける藤沢市鵠沼(くげぬま)おやじパトロール隊の福島和彦さん(左)=神奈川県藤沢市、米倉昭仁撮影
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