酷暑や在宅勤務による運動不足などが重なり、朝、起き抜けに疲れを感じる「朝バテ」に悩む人も少なくない(写真:Getty Images)
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 疲れている人が、増えている。朝起きた瞬間からすでに疲れている「朝バテ」という人も多いだろう。なぜ疲れから回復できないのか。AERA 2024年9月9日号の「最強の回復法」特集より。

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「何だかくたびれちゃったなぁと思うことが増えました。その日の疲れが抜けきらないうちに次の日が来る、そんな感じです」

 神奈川県で大学教員として働く女性(60)は、慢性的な疲れに悩まされる毎日だ。起きぬけに疲れを感じる。夜は入浴後すぐ強い眠気に襲われ、そして朝、目覚めてまた疲れている──その繰り返しだ。

「もともと疲れるとおなかを壊しがちで、それが気になって食も細くなり、またじわじわと疲れていく。悪循環です」

 心当たりはある。一昨年の春、夫が急逝した。相続関係のあれこれなど今年春の三回忌までは「二度と嫌」なほど慌ただしい日々。ほぼ同時期に女性の父親が認知症になり、母親も体を壊し、その対応にも追われた。

対面で再びだらだらと

 もう一つ影響したのがコロナによる「緊急事態」の終了だ。オンラインのときは短く済ませていた学内の会議などが、「対面になると再びだらだらと長くなった」ことなどで一気に「くたびれ感」が増したという。

「60手前という、一般的にも体力が落ち始める年齢とも重なった。コロナ前には感じなかった自分の中の疲労を、初めて自覚させられるきっかけになりました」

 疲れている人が、増えている。休むことの大切さを訴える一般社団法人「日本リカバリー協会」が就労者10万人を対象に毎年行っている調査によると、今年は「疲れている」「慢性的に疲れている」と答えた人が81.7%。「約8割が疲れている」という数字はここ数年変わっていない。

 1999年に厚生省(当時)が60代までの就労者を対象に行った疲労度の調査では、「疲れている」は約6割。疲れている日本人が25年間で約2割増えたことになる。同協会代表理事で医学博士の片野秀樹さんはこう話す。

「これは驚きの数字です。本来、『疲労』は『発熱』『痛み』と並んで『体の異常を知らせる3大アラート(警告)』。でも、痛みや発熱ならすぐに病院にかかるのに、疲労に関しては軽く見てしまう人が多い。これは危険なことなんです」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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