春風亭一之輔・落語家
この記事の写真をすべて見る

 落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「リーダー」。

【写真】下積み時代のエピソードを語る息の長いタレントはこちら

 自民党総裁選挙の話題でもちきりだ。政党のリーダーを選ぶ選挙は20人もの「推薦人」が必要らしい。

 私のこと、推してもらえませんか?

 あなたのこと、推してあげましょうか?

 みたいな駆け引きの末に20人集めないと、トップに立てないどころか立候補すらもできない。リーダーになろうってヤツが20人くらい集められないでどーすんだよ? っていうことか。

 私の所属する落語協会の前座は現在25人。入門してから1〜5年ほどの一番下の身分を「前座」と呼ぶ。なり手が減少傾向というものの、常時20人以上は前座がいる状態だ。ワラワラと勝手に集まってくるので、推薦人を集めるよりは難しくはない。

 その前座の中の一番キャリアの古い者が「前座会長」というリーダー的役職に就く。選挙などは無く、どんなボンヤリ野郎でも一番古株なら会長になれる。なりたくなくても、させられる。響きからして、全く偉くなさそうな「会長」である。

 その25人が各寄席の昼夜の楽屋に数人ずつ配置されて、半日もしくは一日楽屋働きをする。出演者にお茶をいれたり、着付けをしたり、着物を畳んだり、出囃子の太鼓を叩いたり、座布団やメクリをひっくり返したり……やることは山ほどある。

 楽屋内の前座の中で一番年季を経ている者が「立前座(たてぜんざ)」と呼ばれ、その楽屋の一切を取り仕切る。出番の調整、時間配分などは立前座の仕事だ。真打であろうと立前座から「待ち時間は◯分でお願いします」と言われれば、それに従わなければならない。

 とにかく楽屋の前座の中で一番偉いのが立前座なのだ。

 立前座にもいろいろタイプがある。

 これは私個人の感想だが、「自分は特になにもせずに、要所要所を上手く抑えることができる」のが良い立前座だと思う。

次のページ
リーダーに求められる資質は