山田監督の最新作、映画「きみの色」は8月30日全国公開。人が色として見えるミッションスクールに通うトツ子は、美しい色を放つ少女・きみと音楽好きの少年・ルイと出会い、バンドを組み、心を通わせていく物語。🄫2024「きみの色」製作委員会

3人の色は光の三原色

 トツ子が感じる3人の色は光の三原色なんです。光の三原色は重なると白になる。3人が集まると白くなるというところに、3人の可能性を重ねました。三角形を意識しましたし、一人の人として立っていけるように。あとは、観た人に愛してもらえるキャラクターというところも意識しました。

――作中の描写にはっとする人は多いだろう。登場人物たちの心のひだが伝わってくる。山田監督は、10代は「自分以外の世界を持った人と通じ合えた喜びが新鮮にある世代」だという。

感覚が似た人と出会えること

山田 「きみの色」の子たちは、好きなものがまわりと少しズレているかもしれません。そんな3人が出会ったことが、まず奇跡です。

 たとえば、きみちゃんはギターでグレゴリオ聖歌の「アヴェ・マリア」を練習していますが、トツ子とは信仰の気持ちから「アヴェ・マリア」が好きでつながっている。3人がバンドを組んだ後、ルイくんが二人に最初に聴かせた音楽も「アヴェ・マリア」。きみちゃんが本屋で演奏していたこの曲を、「僕は聴いていたよ」「心を動かされたよ」というところまで、ルイくんは伝えたかったと思う。とても大切なシーンとして描いています。

 学校には同じ年の子たちが集まっているだけで、好きなものが一緒だから同じ学校にいるわけではないでしょう。そういう環境で、好きなものが似ている、感覚が似た人と出会えることは、大きな宝物になると思っています。

いろいろな「自分」がある

──「思春期の鋭すぎる感受性」はいつの時代も変わらないが、「社会性」のとらえ方が変化している、と感じている。少し前の「空気を読む」「読まない」「読めない」からさらに細分化して、「若い人ほどよく考えていると思うことが多くなった」という。

山田 SNSの発展は大きいと思いますが、一人が複数のアカウントを持つということは、たくさんの人格を使い分けるということ。塾に行っている自分、学校での自分、家での自分というふうに、いろいろな「自分」が存在しているんだろうなと感じていました。

 私の甥は中高生ですが、話していると、言葉の選び方は上手だし、いろいろなことを考えているんだろうなと感じます。生まれた時からの文化として「無意識に切り替えているのかな」と感じたこともあります。

インタビューに応じる山田尚子監督(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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色も音も起源は光の波