『キャプテン翼』(c)高橋陽一/集英社

 読者からは、早世したスパルタコーチ、宗方仁の言葉も。

「『この27年が人の80年におとるとは思わない』というセリフ。3年前病気になったとき、自分も彼のような悔いのない人生を送れているのか、あらためて思い出しました」(53歳・女性)

 最後はスポ根漫画の王道、野球漫画から。

「グラゼニ」(原作・森高夕次 漫画・足立金太郎/講談社)では、瀬戸内カーナビーツの投手、原武裕美の「『行くとき』に『イケナイ』小物は引っ込んどれ!」、「キャプテン」(ちばあきお/集英社)の主人公、谷口タカオの「お…おれたちみたいに素質も才能もないものは こうやるしか方法はないんだ」など熱いセリフがほとばしるほか、レジェンド「巨人の星」(原作・梶原一騎 作画・川崎のぼる/講談社)は主人公である星飛雄馬の父・一徹の「ふりむくなっ 見る前に飛べ ただ前進と戦いあるのみ それが青春じゃよ!」などセリフを追うだけで腹に力が入ってくる。

 自分の知人のなかで一番の漫画通、50代の男性会社員に締めてもらおう。彼が選んだのは、野球漫画のなかの野球漫画「ドカベン」(水島新司/水島プロダクション)。その神巻と呼ばれる31巻の殿馬のこんな言葉を紹介してくれた。

「そいつらと今こうして野球をやってるづらとはなァ こういう青春もまたよかろうづらぜ」

 里中は投球を続け、捕手の山田は里中とのコンビネーションに苦悩し……。二塁手の殿馬は、陰に日なたにチームを救う。

「そんな殿馬の大人ぶりが、このあたりから俄然目立つように。いい年になると、殿馬的なかっこいい大人になりたいと思うようになる。作中、殿馬は高校生ですが(笑)」(男性)

 殿馬が山田、岩鬼と初めて巡り合ったシーンを、バッターボックスで回想した心の中のセリフが、これだった。

「何というか、水島新司の青春観が出ていると思います」(同)

 スポーツ漫画は忘れかけていた、いろんな大事なことをおしえてくれる。(ライター・福光恵)

AERA 2024年9月2日号より抜粋し一部加筆

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