『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』創刊号
『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』創刊号

 前回から始まった、現代ジャズシーンの新しい動向をお伝えするシリーズの2回目です。ここ数年の新譜の動きで著しいのは、ヴォーカルの進出です。前回ご紹介したホセ・ジェームスはじめ、グレゴリー・ポーターやベッカ・スティーヴンス、そしてグレッチェン・パーラトといった新しいタイプのヴォーカリストが次々にシーンに登場しています。

 また、このところ話題となっているロバート・グラスパーにしても、たとえば『ブラック・レディオ』では、エリカ・バドゥの参加が注目されました。こうした傾向は一昔前には考えられなかったことです。要するに、インストジャズとヴォーカルの垣根が取り払われたのですね。

 こうした動向を踏まえ、現在私が監修している小学館の隔週刊行CDつきマガジンの第3弾は、『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』と決定いたしました。創刊は4月19日。現在刊行中の『ジャズの巨人』シリーズと同じで、全26巻を1年に渡ってお届けいたします。ちなみに創刊号は付属CD10曲つきで、なんと特価500円です!

 内容はジャズ・ヴォーカルに興味を持った方向けに、それこそ世界最高峰のジャズ・ヴォーカリストのすべてを網羅しています。「エラ・サラ・カーメン」と並び称された3大黒人女性歌手は言うまでもなく、ジャズ・ヴォーカルの別格的大物ビリー・ホリディ、そして白人女性ヴォーカルの第一人者、アニタ・オディを筆頭に、日本で人気のヘレン・メリル、クールな歌声が特徴のジューン・クリスティなど女性ヴォーカリストだけでなく、ジャズ・ヴォーカルの元祖と言われたルイ・アームストロングなど、男性ヴォーカリストも充実しています。

 目玉とも言えるのは、アメリカン・ポピュラー・ミュージックの象徴的存在、フランク・シナトラを2号に渡ってご紹介しているところでしょう。また、シナトラと並んでポピュラー、ジャズの両方で大活躍した黒人男性歌手ナット・キング・コールも、良く知られた《モナ・リザ》《アンフォゲッタブル》といったポピュラーチューンから、ジャズ・スタンダード《スターダスト》まで、幅広く収録しております。

 ちょっと異色なのは「昭和のジャズ歌」として、「元祖3人娘」言われた美空ひばり、江利チエミ、雪村いずみらの魅力的なジャズ・ヴォーカルも収録しているところですね。「歌謡曲」あるいは「演歌歌手」のイメージが強い美空ひばりのどジャズ歌唱《恋人よ我に帰れ》は、聴けば目からウロコの素晴らしさ。

 そしてもちろんヴォーカル・グループの巻やボサ・ノヴァ特集、映画音楽特集、また作曲家シリーズとしてジョージ・ガーシュウィンの楽曲を集めたシリーズなど、とにかくジャズ・ヴォーカルのすべてが網羅されております。

 このシリーズの目的は、まずはジャズ・ヴォーカルに気軽に親しんでいただくところにあるので、ミュージシャンの経歴に始まり、知られざるエピソード、曲ごとの聴き所解説など、他の音楽ジャンルとは一味違ったジャズ・ヴォーカルの魅力を具体的にご紹介して行きます。また、シリーズ最後の巻は「現代のジャズ・ヴォーカル」として、冒頭にお話した現代ジャズ・シーンの動向と絡め、ジャズ・ヴォーカルの歴史的全体像が見渡せるよう配慮いたしました。

 なお、創刊記念イヴェントを4月23日(土曜日)午後3時30分より、私が経営する四谷のジャズ喫茶「いーぐる」にて行います。予約の必要は無く、飲食代金のみでご参加いただけます。当日は創刊号の即売もいたします。プレゼントあり。ジャズ・ヴォーカルに関心のあるファンの皆様方、ぜひお気軽にお越しください。 [次回4/25(月)更新予定]