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「まだ開発段階ですが、当社の売りは空飛ぶクルマ用の高出力モーターです」(長野県飯田市の精密機器メーカー、多摩川精機)

【図表】防衛費大幅増で潤う会社は? 防衛省との契約高が多い20社はこちら

 3月15日から17日にかけて、千葉・幕張メッセで開かれた防衛産業の国際展示会「DSEI JAPAN」。岸田文雄政権が昨秋、防衛費の増額方針を打ち出したばかりのタイミングだったこともあり、3日間で2019年に開催された前回約1万人の2倍超となる約2万2千人が来場した。会場では自衛隊や政府、大手企業の関係者だけでなく、中小企業の売り込みにも熱がこもっていた。

 国内の防衛産業の裾野(すその)は広い。「防衛白書」(22年版)によれば、元請けの大手から下請け企業まで合わせると戦闘機は約1100社、戦車は約1300社、護衛艦は約8300社が生産に携わる。展示会には、こうした会社を含め65カ国から250社以上が出展した。

 ただし、国内企業の場合、防衛事業の販路はほぼ自衛隊に限られている。利益率も低く、事業単独で経営が成り立つ会社は少数派だ。最近は事業から撤退する会社も目立つ。無人哨戒機の開発などに取り組む計測器・水中機器メーカー、日本海洋(東京都足立区)の担当者は言う。

「防衛費の増額は確かに追い風ですが、具体的な話はこれから。(売り上げや利益につながるかは)まだわかりません」

 政府は予算増に合わせ、武器輸出を条件付きで認める「防衛装備移転三原則」の運用指針を緩めたり、米企業への「弟子入り」制度をもうけたりする議論を始めるなど、防衛産業を強化する姿勢を鮮明に打ち出した。

 今回の展示会は防衛関連のイベントを手がける英企業や日本のコンサル会社が主催し、防衛省や経済産業省、外務省などが後援した。防衛装備庁の松本恭典・装備政策課長は「(大手などの)プライム企業だけでなく、下請け会社も含めたサプライチェーン(供給網)全体をみていく必要がある」と強調する。

 とはいえ、一般的な多くの企業にとって「そもそもどうやって参入していいのか、よくわからない」(初めて出展した会社)のが現状だろう。取材にあたり事前登録の際に主催者側から本人確認のための名刺や免許証の画像データを求められたり、取材の目的を複数回問われたりするなど、通常の展示会と違う独特な雰囲気も感じた。展示会は活気にあふれたが、企業にとってビジネスチャンスとなるかは未知数だ。

週刊朝日  2023年4月14日号