今日17日は彼岸の入りです。「暑さ寒さも彼岸まで」というように、そろそろ暖かな陽気が続きそうな予報が出て来ましたね。そうなると気になるのが桜の開花の目安となる「桜前線」です。
ところで、「桜前線」という言葉はいつからあるのでしょうか?今では、すっかり私たちの春の気象情報と深いつながりを持ちますが、気象用語ではありません…と言うと?

桜前線という言葉はいつ、誰が言い出したの?

1926(大正15)年から、中央気象台で、東京付近の桜の開花の調査を始め、1928年(昭和3年)に最初の開花予想が発表されるようになりました。気象庁による桜の開花予想は、1956(昭和26)年から始まり、日本各地の桜(主にソメイヨシノ)の開花予想日を結んだ線のこと「桜前線(さくらぜんせん)」と呼ぶようになったのは、1967年(昭和42年)頃からです。マスメディアによる造語で、気象用語ではありません。

季語としての「桜前線」

言葉が作られてから、まだほんの半世紀ですので、季語としても新しく、どんな俳句が作られているだろう?と調べてみたところ…
『永き日や桜前線なほ北へ』 稲畑廣太郎句(ホトトギス 2003年)
子規が興し、虚子が育てたホトトギスの現代俳句に見つけることが出来ました。2003年とはかなり近年の句ですね。
季語としては、同様の意味を持ち、古くから用いられている「花時」「花便り」などがよく使われているようですが、せっかく根付いた言葉なので、ぜひ句作の際に使ってみたい季語です。

桜はなぜこんなに好まれるのか?

桜は、開花から満開(8分咲き)までの期間が地域により異なります。沖縄・奄美地方で約2週間、九州から東海・関東地方では約1週間、北陸・東北地方では約5日、北海道地方では約4日…と、北上するほど短くなります。この短い命の花は、今では私たち日本人にとって、春の風物として欠かせない存在となっています。その様子がまるで人の一生のように感じるからではないかと思うのは私だけでしょうか。
開花を待つ間(胎児)、開花宣言(乳幼児~児童)を経て、満開(壮年期)から散り際(老年)まで…私たちは桜に「凝縮した命の姿」を見つけ、愛さずにはいられないのかもしれません。
さて、今年の桜はいつどこで、どんな人生を見せてくれるでしょうか?楽しみですね!
『その時を待つ間も愛し桜かな』 柊花

参考
俳句歳時記「春」 角川学芸出版編