04年11月、被害者の女子中学生の叔母が彼女の行動に不審を抱き、警察にこれを通報すると、翌12月に容疑者らが逮捕された。集団レイプに加わった密陽連合のメンバーだけで44人もいた。犯行を助けたメンバーとその恋人たちは75人に達した。そして、複数の女子が被害に遭っていたこともわかった。

 しかしその後、事件は思わぬ展開をみせる。密陽の警察署所属の刑事らは、

「私は密陽が故郷だが、あなたたちは密陽出身でもないのに、なぜここに来て密陽の雰囲気を乱すのか」「お前たちが男を先に誘惑したのではないか」「男子生徒たちは将来密陽を導く人たちだ」

 などと驚くような発言をしたというのだ。

息子への「寛大な処罰」を求める容疑者の親たち

 密陽性暴力相談所が2005年、密陽市の地域住民約650人を対象にアンケートを実施した。「事件の責任は女性にあるのか」という質問に「そうだ」と答えた割合が64%に達した。

 容疑者の親たちは、息子への「寛大な処罰」を求め、被害者を直接訪ねて「処罰不願書」の作成を促した。学校まで訪ねていったという。親のなかには、女子中学生の両親に、「娘をきちんと教育していたら、こんなことはなかった」「女に誘惑されて惑わされない男はいない」などと言ったという。

 被害者たちは彼らの示談の要求に勝てず、わずか5000万ウォン(約470万円/当時)で処罰不願書を作成した。10人が起訴されたが、他は少年院に入ったり、示談やボランティア活動で終わったりして、刑事処罰を受けずに事件はその後、収束していった。

 しかし韓国の国民は事件を忘れていなかった。ユーチューブのチャンネル登録者数が627万人という韓国の料理研究家が、22年の夏に密陽市のクッパ店の映像を流した。すると、今年6月1日、「奈落保管所」というユーチューブチャンネルが、この映像に出てくる店員について、「密陽集団性的暴行事件の犯人側のリーダー」と名指しする映像を配信した。その「犯人」が1986年生まれであり、すでに結婚していて娘がいることも暴露した。

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処罰を受けていない加害者に対する「私的な処罰」を要求する声高まる