一方、その男は自身のSNSに「娘にとっていちばん頼もしい父親になる」と書くなど、娘への愛情を示していた。すると多くの人々が彼のSNSに「自分の娘は大事なのに他人の娘は大事ではないのか」などと批判し、男が働くクッパ店に抗議電話が殺到した。店主は彼を解雇したという。

 騒動はこれで収まらなかった。ユーチューバーたちは競うように当時の加害者たちの現在の顔と職場、家族関係、SNSアカウントを暴露する。かつての加害者たちは、外国車ディーラー、公務員などになり、有名企業に勤める人もいた。裕福に暮らす人も少なくなかった。しかしユーチューバーによって顔が公開されると、多くが解雇され、家族関係は破綻していった。加害者らの子どもたちが学校で被害に遭うこともあった。

 韓国ではネットフリックスの「ハン・ゴンジュ 17歳の涙」の影響で、もともとこの事件をよく知らなかった10代と20代の若者も事件を知ることとなり、SNSで処罰を受けていない加害者に対する「私的な処罰」を要求する声が高まった。

何事もなかったように生きている加害者を断罪

 ユーチューバーたちに加害者たちの身元を伝えたのは、彼らの過去を知っている同じ地域出身の知人たちであると推定される。公開されたユーチューブ映像には、加害者の昔の写真や同級生や知人でなくては知りえない内容が含まれていた。いま加害者が勤める職場情報や近況も詳しかった。暴露は8月に入っても止まっていない。

 事件に関与した男たちは、暴露されるよりも先にユーチューブ映像に顔を公開し、反省と謝罪の意を込めた「告白」をアップする動きが出てきた。これが冒頭で述べた告白映像だ。

 被害に遭ったかつての女子中学生の傷は消えないのに、加害者は何事もなかったかのように生きている。これに対し、遅ればせながら社会が彼らを断罪する、という構図に多くの人々が歓呼している。

 だが、「ユーチューバーたちが事件を利用している」と指摘する声もある。

 検事出身で、現在、刑事事件を専門に扱う弁護士のP氏(58)はこう話す。

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被害者が二次被害に