一方、小林氏は早くも推薦人20人を確保したと報道された。麻生派の重鎮、甘利明氏がバックアップしている。 

 「茂木氏の要請を断ったというのは大きなポイントだ。麻生会長が石破氏と不仲であることは有名。小泉氏を選択する手もありますが、小泉氏が総裁になれば一気に世代交代が進んでしまう。それなら、麻生派からは長く候補者を出していないので、河野氏を出馬させることは十分にある。岸田首相を主流派として支えてきた閣僚でもある。岸田首相も麻生会長から話があれば、簡単に断ることはできない。茂木氏に出馬しないように、支援にまわれと説得できるのも麻生会長だけ。麻生派だけはまだ解散していないので、団結力はある。麻生派、岸田首相、茂木氏と主流派を束ねて、麻生会長もキングメーカーの座は維持し続けたいはずだ」(前出・麻生派の国会議員)

菅氏は「小石河」の一人に絞る?

 現在は副総裁の麻生氏だが、茂木氏と同様に任期はまもなく終わる。そうなると「無役」にもなりかねない。一方、小石河の3人の背後には非主流派の菅義偉元首相がいる。菅氏が3人の「共倒れ」を避けるために調整して「1人に絞る」という話も流れている。

 前出の藤川氏がこう話す。

「菅氏も麻生氏に対抗して、自分がキングメーカーの立場になろうと思っているでしょう。ただ、麻生氏は今も派閥を維持し、菅氏は派閥がない。私が自民党の秘書時代は、派閥が『誰に入れろ』と指示する時代で、逆らうことができなかった。その派閥の力は今も裏では色濃く残る。岸田首相が記者会見で語ったように、自民党が変わったという感じを全面的に出すには、小石河の3人がいずれも出馬して戦うこと。総裁選が盛り上がって派閥政治が終わったということにもなるし、低支持率から脱却するには絶好のチャンスではないのか。肝心なのは、自民党でそれをウラで誰が演出できるか、そういう人材がいるか、だろう」

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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