台風が直撃したゴルフ練習場
台風が直撃したゴルフ練習場
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 15日、非常に強い台風7号は小笠原諸島近海を発達しながら北上し、16日明け方に関東に最接近し、まだまだ厳重な警戒が必要だ。大きな被害をもたらした2019年9月の台風の「現場」は? 過去に読まれた記事を振り返る「AERA dot.」2023年1月5日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。

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「忘れもしません。2019年9月9日未明でした。私が1階で寝ていたところ、いきなり2階のほうから『ドーン』という何かがぶつかってきたすさまじい音が響いてきたのです。2階には当時高校1年生だった双子の息子たちと妻が寝ていたので、慌てて跳び起きて階段を駆け上がりました」

 こう話すのは、千葉県市原市五井に住む松山高宏さんだ。この日、台風15号が県内を襲い、千葉市では観測史上1位の最大瞬間風速57・5メートルを記録。各地に甚大な被害を与えた。

 松山さんの家がある住宅街の隣にあったゴルフ練習場「市原ゴルフガーデン」の鉄柱13本も、この台風になぎ倒された。防球ネットを張るために建てられた高さ30~40メートルの支柱に屋根を押しつぶされるなどして、21軒が被災。20代の女性が重傷を負い、生後3カ月の乳児が負傷する大事故になった。

「屋根の一部が壊れ、近くの駐車場に止めていた自家用車はペシャンコ。それでも誰もけがしなかったのが不幸中の幸いでした」(松山さん)

 被害の様子はテレビや新聞のニュースで大々的に扱われ、記憶に残っている人も多いだろう。さらに注目を浴びたのは、練習場の代理人弁護士が「鉄柱の撤去はするが、自然災害なのでそれ以外の補償はしない」と一方的に通告したことだ。

「あれで『金の亡者』対『被災者』という構図ができあがり、練習場の経営者に非難が殺到しました。10月下旬に弁護士が代わるまで針のむしろだったと思います」(地元タウン誌記者)

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