一方、相方のきよしさんは、初めて会った新入社員の女の子であるわたしにも、「よろしくな」と深々と頭を下げて握手してくれるような人だった。
「こんな大物が、わたしに」と感激したことをいまでも覚えている。
やすしさんが仕事に遅れてきたり、暴言を吐いたりしてまわりに迷惑をかけても、きよしさんが代わりにおおらかに「すまん」と言えるような、そんな人だった。
きよしさんは、社員やタレント、年下年上、ほんとうに誰からも好かれていた。
この二人は、日本の芸能史に残る突出した才能をもっている人たち。だから普通の人と同じではない。ただ、それでもなお、思う。
人は、不機嫌な人には近づきたくないのだ、と。
やすしさんのように特別な才能がある人や抜きんでた力のある人は、たしかに人は機嫌をとってくれる。
ただそれだって、不運が訪れ、不遇のときは、機嫌をとってくれなくなる。
基本的に、他人は自分の機嫌をとってはくれないのだ。
このことは、忘れがちだが覚えておきたい。
ましてや、わたしたちの99パーセントは、ふつうの人間だ。
「不機嫌な人に近づきたくない」
「他人は自分の機嫌をとってくれない」
このことは、肝に銘じておいたほうがいい。
そして吉本興業で、もう一つ大切なことを教わった。