紀伊國屋書店新宿本店2階の文芸書棚に向かうと、ピンク色の表紙をした本がずらりとこちらを向いていた。若い人たちが次々と手にとっていく。表紙には「桜前線」の文字。この書棚は、まさに桜だった。
本書は、1970年以降に生まれた歌人の中から、著者が任意に40人を選び、解説を加えた現代短歌アンソロジーである。選定基準は「現代日本文化のエッジとして力を発揮している歌人たち」。結社に所属している歌人から、無所属でネットを中心に活動している歌人まで、さまざまだ。しかし、ひとつ共通点がある。それは「闘いを挑んでいる」という点だろう。システム化されてゆく世界への呪詛を叫び続けた中澤系。やる気がないと批判されながら「ごく普通の東京の青年」の言葉で歌い続ける永井祐──。
明治生まれの歌人・斎藤茂吉も、師である伊藤左千夫に反発し、闘いながら短歌の新しい時代をつくっていった。ここに選ばれた40人もまた、これからの短歌の新しい時代をつくり、引っ張ってゆく存在となるだろう。
※週刊朝日 2016年3月11日号