猛暑に見舞われた日本列島。夏休み真っただ中で、レジャーや帰省などお出かけする機会も多い。普段と違って気を付けるべきことは何か。「夏休みスペシャル」として今読みたい記事をあらためて紹介する(この記事は2023年6月23日に配信した内容の再掲です。年齢、肩書等は当時のままです)
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蚊が元気になる季節がやってきた。かゆさだけでなく、寝ているさなかに耳元で鳴る羽音だけでも嫌なものだが、蚊が運ぶ病気も怖い。そんな身近ながら厄介な存在だけに、どんな人が刺されやすいか、真偽不明のさまざまな「うわさ」が存在する。“敵”を知ることは、正しい対処法にもつながる。蚊を30年以上にわたって研究してきた「害虫防除技術研究所」代表の白井良和さんに、「うわさ」の正誤を聞いてみた。
白井さんや防虫剤メーカーのホームページによると、世界には約3500種類の蚊がおり、日本国内に分布しているのは約100種類。そのうち、一般的によく見かけるのがアカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ(東北以南に生息)、ヤマトヤブカ(東北や北海道に多い)の4種類だ。
主な生息環境には違いがあり、家の中に入ってくるのがアカイエカ。民家の周辺や公園、雑木林などで見かけるのが、ヤブ蚊であるヒトスジシマカとヤマトヤブカ。都市部の商業施設や地下鉄構内などに現れるのがチカイエカだ。
いずれも血を吸うのはメスだけ。産卵に必要な栄養を取るためで、オスは雨露や花の蜜などを吸って生きる。
蚊が血を吸う際、血が固まるのを防ぐ成分を含んだ唾液を注入するが、この唾液によってアレルギー反応が起き、猛烈なかゆみを引き起こすのだ。
種類によって、活動が活発な時期も異なる。
アカイエカが吸血するのは4~11月ごろ。人間などが寝ている日没から明け方にかけての時間帯に、血を求めて飛んでくる。
ヒトスジシマカも5~11月ごろだが、動きが活発なのは早朝と夕方ごろ。木陰などの薄暗いところに隠れて、ターゲットが近づくのを待つ「待ち伏せ型」だ。1950年ごろまでは北関東地方が生息域の北限だったが、今では東北地方まで分布が拡大している。
チカイエカは、地下水や雨水などをためる地下の湧水槽内にいて冬眠せず、一年を通じて活動する。名前の「チカ」の通り、都市部の商業施設の地下湧水槽や地下鉄構内の排水槽などに産卵し、発生する。冬場に蚊に刺された場合、チカイエカの可能性が高い。