5月をもって休刊する「週刊朝日」。そんななか、ニュースでは報じられない出来事を掲載した、かつての名物連載「デキゴトロジー」が復活。渡部薫・本誌編集長が休刊の兆候と宣告された日を振り返る。
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「週刊朝日」ってなかなかおもしろい雑誌だよ、とたくさんの人に伝えたい。1978年に始まった“現代版今昔物語”「デキゴトロジー」の復刻もその一つです──。
いま思えば、最初から兆候はあったのです。
2021年5月、編集長に就いてすぐのころ。さる大物劇作家の連載ができるチャンスが巡ってきた。喜び勇んで準備に取りかかろうとしたら、上から物言いがついた。
「時期が……良くないんじゃないか」
あの歯切れの悪さは、近いうちの休刊を見越していたからに違いない。酒の量が増えた。焼酎ぐびっ。γ-GTPの数値が上がる。
収束の気配を見せぬコロナ禍、ずるずる下がる発行部数と実売部数、減っていく広告。つるつるの氷壁を為す術なく滑り落ちる夢をよく見た。酒を飲む夜はさらに増えた。数値が上がる。
同年創刊のライバル誌編集部がある北北西に視線を送りつつ、22年2月、無事に創刊100周年は越えた。
だが、その日はやってきた。休刊宣告。焼酎をぐびぐびぐびーっ。風呂で泣き、そして、思った。
「全然、楽しくない!」
忘れるために飲んでいるのに、酒は今夜も私を悲しくさせてるじゃん。石本美由起は天才だな。
「最後のお祭り編集長はあなたにしかできない」と、言われたことがある。「アホってことか」と地味にショックだったけれど、そんなものかもなあと思えてきた。お祭り上等! ええじゃないかで駆け抜けてやる。
悲しい酒から足を洗い、サボっていたランニングを再開した。飲み友でもあった記者(58)を道連れにして「“ソバーキュリアス”でステキ生活」(22年9月9日号)なんて記事も書いてもらった。千年後の人たちにも、「週刊朝日」という小粋な雑誌があった、そう語られますように。
いつの間にかγ-GTPの数値が19まで下がった。編集長就任後そんな推移をみせたのは、101年で唯一じゃないかしらん。(渡部薫)
※週刊朝日 2023年4月14日号