本書は村上春樹氏が1995年から2015年まで、日本航空の機内誌AGORAなどの雑誌に掲載した紀行文集だ。
 登場する土地はアメリカのボストン、ポートランド、アイスランド、『ノルウェイの森』を書いたギリシャのミコノス島、イタリアのトスカナ、そして題名ともなっているラオスのルアンプラバンなど。その土地への「ハルキ流アプローチ」として、たとえばフィンランドでは映画監督アキ・カウリスマキが経営する風変わりなバーに行き、作曲家シベリウスが人生の大半を送った山荘を訪れ、北欧の芸術的な側面を浮き彫りにしていく。また、日本の本県では夏目漱石が住んでいた家に上がり、三池炭鉱の一つ「万田坑」を見学して歴史遺産に思いを馳せつつ、「くまモン」にも着目し、その土地の歴史を浮かび上がらせていく。
「旅っていいものです。疲れることも、がっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります」(「あとがき」より)。訪れた土地の魅力だけでなく、「旅をする」ことへの哲学的な省察をも与えてくれる一冊だ。