「激辛ブーム」はいつまで続くのか。画像はイメージ(GettyImages)

アルコールと同じような「リスク」

――体には良いのでしょうか。

山本 食欲を増進するという点は良い面ですが、栄養学的には特にメリットはありません。

――救急搬送されるほどの体調不良になるのはなぜですか。

山本 急な強い刺激によって自律神経のバランスが崩れ、血圧が上がったり心拍数が増加したり、吐き気をもよおしたりします。一方で、痛み、ストレス、緊張感のため「迷走神経反射」が起き、血圧が下がったり、脳の血流が少なくなって意識がもうろうとしたりするリスクがあります。

――若い人ほどリスクがあるのでしょうか。

山本 アルコールと同じです。適量がわかっていないのに大量に飲んだり、度数の強いお酒を飲んだりするのは危険ですよね。好奇心や周囲にあおられて食べてしまうのでしょうが、味と違って、辛み成分が粘膜にしみ込んで神経に到達するには数秒かかり、ちょっと遅いので、その間に飲みこんでしまうのです。ですから、唐辛子に慣れていない人や胃腸が丈夫ではない人は、より注意が必要です。

――最近の激辛ブームをどうみていますか。

山本 救急搬送される事例が起きているのですから、テレビの激辛チャレンジ番組は考えもので、不必要だとも思います。お酒の一気飲み番組は存在しませんよね。辛さを求めてエスカレートしてしまうリスクがありますから、アルコールと同じように慎重に考える必要があります。メーカー側も激辛商品のパッケージに「何歳以下は禁止」と目立つように明示したり、購入時の年齢確認なども必要かもしれません。

 唐辛子は食欲増進などの良い面もありますから、本来は「適材適所」で活用すべきスパイスなのです。

(國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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