全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2024年8月5日号にはDOGSHIP合同会社 ヒューマン・ドッグ トレーナー 須崎大さんが登場した。
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一般的な犬の躾の本は、犬本来の行動のみを研究した動物行動学に基づいて書かれている。そこには、犬の心理、飼い主の生活傾向は含まれていない。そのため、自分の愛犬が人に噛みつく、無駄吠えをするなどの問題行動を起こしたとき、飼い主は理解できず途方に暮れてしまうのだ。
長年、手のつけられない課題を抱えた犬たちの行動だけを分析することが多かった。しかし、現代社会においては、犬だけでなく人も一緒にトレーニングすることが問題解決には必要だと、長年の経験と研究から見いだし、メソッド化して活動している。
ケネディ元駐日米国大使の愛犬をトレーニングした経験もあり、全国から予約が殺到。3カ月から半年待ちという人気ぶりだ。
犬は本来、群れをなして生活しながら生きていくための知恵や秩序を学んでいた。
DOGSHIPでは、課題のある犬を1日15〜20匹預かり、動物看護師やトリマー6人が見守る中、同じ空間で過ごさせるトレーニングから始める。群れの中では、家の中では自分が一番という序列がリセットされる。
こうすることで、トレーナーの指示が受け入れやすくなる。そして、吠える・噛むなどの行動や主張が強い犬は、群れの中で是正されていく。
飼い主には、愛犬の習性や行動心理、そして個性を学んでもらう。セッションの中で問題行動の原因も探る。
「会社ではテキパキと働いても、家でだらしなければ、犬はその姿しか知らない。言うことを聞かない、吠えるなどには、飼い主との関係や生活する環境に理由があります」
飼い主を責めることはしない。解決策を見いだし共にペットと向き合うのだ。
小学校で犬を通じて命について学ぶ、動物介在教育も行っている。これまでに100校以上で授業した。最初は怖くて近づけなかった子どもも、授業の後には、触れる子も増えるそう。
「言葉が伝わらない犬でも、互いに創意工夫があれば心が通い合い仲良くなれるんです」
コロナ後、社員のコミュニケーション力の低下や出社率の低下に悩む企業が増え、犬と学ぶコミュニケーションの研修も行っている。
夢は大学で、一般教養や社会学として、動物から学ぶコミュニケーションを教えることだ。(ライター・米澤伸子)
※AERA 2024年8月5日号