1月17日で22年目を数えた阪神・淡路大震災。本書は震災を機に、現在も様々な形で神戸に関わり続ける10組13人へのインタビュー集だ。
 震災は時に「地域復興」「住民同士の助け合い」といった言葉で美化される。しかし本書が着目するのはむしろ、そうしたイメージから削ぎ落とされる現実だ。地元フリーペーパー発行人・慈憲一は、震災を機に東京から神戸に戻った。地元の役に立ちたいと復興委員会に加わるも「市の回し者」などと誹謗を受け疲弊する。義務感の伴う「まちづくり」ではなく「普通の町」を楽しむ視点に転換しようと、ユニークな企画を連発している。
 元新聞記者の小説家・真山仁は、神戸市内の自宅で被災した。当時、救助活動への影響を懸念し取材は控えたが葛藤は残ったと明かす。現在は東日本大震災を題材に、震災報道やボランティアのあり方に斬り込む作品を発表する。「被災地にある、あらゆる“タブー”を潰してやろうと思った」との言葉に書き手としての矜持が滲む。震災後の現実にとことん肉薄した一冊だ。

週刊朝日 2016年2月19日号

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