紫外線は美肌の大敵とされているが、適度な日光浴は重要だ。ビタミンD合成を促し、睡眠の質向上、セロトニン分泌などの効果もある。日焼け対策も行き過ぎると不眠に陥り、肌の老化を早める可能性も……。医療関係者は、過剰な紫外線防御に注意を促す。
【データ】場所と季節でこんなに差がある! 太陽にあたるべき時間
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寝付けないのは「太陽光」不足
都内で働く30代女性は、コロナ禍を機にリモートワークに移行した。しかし、生活リズムが乱れがちで、毎日規則正しく起床するほうがいいだろうと、1年後に職場勤務に戻した。
だが、今度は夜なかなか寝付けず、不眠に悩まされるようになる。
医師に相談すると、「日の光が足りていないのでは?」と指摘された。通勤は電車を利用しており外を歩くのは数分程度なので、日光照射時間としては不十分なのだという。
確かにリモートワーク中は何かと外出したり、窓辺で日に当たったり、運動したりすることが多かった。だが、今は一日中、日光が遮断されたオフィスにいるし、極力直射日光を避けて生活している。日焼けを防ぐため、出勤前には日焼け止めを顔や腕に塗っていたし、メイク下地もUVカット機能付きだ。
紫外線は極力避けるべしと思っていたのに、それが不調を招いていたとは……。適度に太陽光を浴びる生活を心掛けたところ、以前より寝付きが良くなってきたという。
ビタミンDが睡眠の質とリズムに関係
この女性は、ビタミンD不足と考えられる。
ビタミンDは日光を浴びることで生成されるか、または食事から合成される。食事だけで十分な量を摂取することは容易ではない。
ビタミンDにはさまざまな効能があるが、近年、注目を集めているのは睡眠の質を向上させる働きだ。ビタミンD研究に携わる東京慈恵会医科大学の越智小枝教授は、こう指摘する。
「ビタミンDを 細胞に取り込むビタミンD受容体が脳の中にあり、睡眠の質・リズムに関係することが学術調査などで少しずつ明らかになっています」
概日リズム(サーカディアン・リズム)は、日の光を特に起床時に浴びることで整えられる。リズムを整えるだけでなく、ビタミンD自体に睡眠の質や満足感を向上する効果が期待できるようだ。