初めての1人旅でスペイン・バルセロナを訪れた(本人提供)
初めての1人旅でスペイン・バルセロナを訪れた(本人提供)

――31歳までお給料をすべて実家に渡し、お小遣いをもらうのが高橋家のやり方だったそうですね。ネット上では「親ガチャ」とよく言われますが、生まれた環境をハズレだと悲観したりしないのはどうしてですか。

 親や環境が悪くても「自分の人生だから!」と良い生き方を手に入れていくことは可能だと思います。でも、親の影響はかなり大きいですよね。私が、貧乏でも「ツライ……」って感じじゃなかったのは、両親がものすごくポジティブだったからです。その行動を見て育ったので、ポジティブに転換する方法は? と改めて聞かれても、実はうまく説明できません。

 例えば、牛乳配達屋さんだった父は朝が早く、睡眠時間も短いはずなのに、仕事から帰っても「疲れた」って言ったのを聞いたことがありませんでした。その代わり、「みんなの顔を見てると疲れが吹っ飛ぶわ~」って言うんです。愛情をたくさん注いでもらって、自己肯定感がすごい上がる家でした。ああしろ、こうしろと言われたこともないですね。事実は一つでも、捉え方次第だとは思っています。

――4人きょうだいの長女で、家族を支えるために背負ってきたものも大きかったと思います。

 そうですね。親の借金を完済する31歳まではずっとお小遣い制で「うちはそうなんです」ぐらいの普通の感覚だったんですが、今思えば、友達の誕生日プレゼントも買えなかったりしたのはつらかったですね。必ずモノを渡す必要があるとは思わないんですが、最低限の愛情を表現するお金さえなかった。

(完済後は)本当に大きな肩の荷が下りた感じで、ようやく自分に目を向けられるようになりました。それまでは、本当に好きなこと、本当にやりたいことに気づけなかったんです。ある日、ふと「旅行したい!」と思い立って、4日後には1人でスペイン・バルセロナに行きました。自分がそこまでアクティブだったとは知らなかったし、お金がかかるから選択肢から消しちゃっていたんだと思います。その後も1人でアフリカに行ったり、コロナが少し落ち着いてからはタイにも行きました。

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「子どもを産みたい」から変化