ドン・キホーテも一部店舗でレジにイスを導入した。浅草店(東京都台東区)にはイス設置を案内する看板が掲げられている=5月28日
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 働き手不足から人材確保が課題となる中、企業は労働条件の改善に動いている。立つのが当たり前だったレジ接客でイスに座ることを許可する店が登場したが、この取り組みは接客業だけではない。AERA 2024年7月29日号より。

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 働き手不足を背景にした同様の取り組みは、他業種でも始まる。リクルートワークス研究所研究員の坂本貴志さんによると、「座ったまま警備(座哨警備)」の試みも出てきつつあるという。警備といっても交通誘導の警備から現金輸送警備までさまざまだが、座哨警備を導入しやすいのは施設警備。人手不足の中で警備員の高齢化が進み、警備会社のみならず受け入れ施設の方でも「配慮」する動きが少しずつ出てきているのだ。

 ただ、警備会社はさまざまな現場の案件を受注し、現場ごとに警備員を派遣するビジネス。受け入れ先が座哨警備を受け入れるかどうかの確約が常にできるわけではない。

「座ったまま警備を始めたことで警備員への応募が増え、働き手不足が解決するというような目に見える効果が出るのはまだ先だと思います」

 このところ進む小売店へのセルフレジ導入や、飲食店や宿泊施設でタッチパネルでのセルフオーダーなど、デジタルを用いて「従業員の負担を少し下げてあげよう」という労働条件の改善も、広い意味で言えば人手不足解消という文脈での重要な要素と位置付けられると、坂本さんは指摘する。

「過疎地域の物流で、これまで一戸一戸配送していたのを『集配所にまとめて置いておき、あとは住民の方が取りに来て運んでくださいね』といった事例も聞くようになりました」

サービスは実質低下

 しかし一方でデメリットもある。「それを負うのは消費者の側だ」と坂本さんは言う。

 これまでは労働者側が至れり尽くせりのサービスをしてくれた。消費者にとってはセルフレジよりも有人レジの方が、座っているレジの人よりも立っている人の方が、より丁寧で機動的であることは確か。実質的なサービス水準はやはり低下していくことになるかもしれない。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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