RWSLでは事故は防げなかった
そもそも、「RWSLが事故発生時に導入されていたとしても、事故は防げなかった」と指摘する。
「RWSLが点灯するのは、着陸機が滑走路に約2マイル(約3.7キロ)まで近づいたときで、時間にしたら着陸の約50秒前。事故の際、海保機が衝突の約40秒前にすでに滑走路で停止していたのであれば、衝突の約60秒前には滑走路に向けて動き出していたことになる。RWSLが設置されていたとしても、衝突は避けられるかどうかはわかりません」
すでにある設備「RGL」を活用すべき
航空安全会議が対案として挙げるのは、現在すでに空港に設置されている「滑走路警戒灯(ランウェー・ガード・ライト=RGL)」の活用だ。
RGLは、誘導路から滑走路に出る場所の左右に設けられた黄色い2つの並んだライトのこと。交互に点滅し、「ここから先が滑走路」と航空機や車両に伝える。諸外国の空港ではRGLが常時点灯しているが、日本では夜間や雨などの低視程時に限られている。諸外国のように、常時点灯させてはどうか。
米国と中国では、誘導路の突端に埋め込む新型RGLも併用されているという。米運輸省によると、連邦航空局は低コストの滑走路誤進入対策として、従来型と新型の2つのタイプのRGLの使用拡大を検討しているという。
「私は乗務中に海外の空港で常時点灯するRGLを何回も見ています。他の航空灯火に比べて明るく、連邦航空局も滑走路誤進入対策として有効であると認識している。ところが、検討委員会でRGLの活用が検討された形跡がありません」
「滑走路安全チーム」が形骸化
検討すべき対策はまだある。国際民間航空機関(ICAO:イカオ)は、滑走路への誤進入を防止するため、空港ごとに「滑走路安全チーム(ランウェー・セーフティー・チーム=RST)」の運用を推奨してきた。空港管理者、航空機オペレーター、パイロット、管制官などのメンバーが定期的に集まり、滑走路の安全運用について話し合うというものだ。
中間取りまとめでも「主要空港にRSTを設置し、連携した取り組みを推進することも検討すべき」としている。実は、成田、羽田、伊丹、那覇の4空港ではすでにRSTが設けられてはいる。
けれども、「ICAOのRSTマニュアルでは、規制当局の参加を『オブザーバーに限定する』としています。ところが、日本では国土交通省航空局がRSTの構成メンバーを決めるなど、本来のRSTのかたちとはほど遠い仕組みになっている」という。