羽田空港第二ターミナルから事故が発生した滑走路を望む=7月22日、米倉昭仁撮影

「緊急対策」に現場は混乱

 だが、航空局は「航空機の離陸順番を示す情報の提供を当面停止」する緊急対策を打ち出した。その結果、離陸準備で忙しいコックピット内のパイロットと管制官の間ではこんな「不毛なやりとり」が多発した。

パイロット「われわれの機はいつ離陸できるのか」

管制官「あの英国航空機の後だ」

パイロット「それは何番目なんだ」

管制官「……」

「航空局が打ち出した対策は、現場にいたずらに負荷をかける愚策としか思えなかった。現場の声を聞かないから、こんなことが起こるのです」(牛草さん)

 航空局は、今回の中間取りとりまとめで「管制指示の誤認などのリスク低減にもつながる」とされたことを受けて、7月、ようやく離陸順序の伝達を再開する予定だ。

RWSLの拡充に「明確に反対」

滑走路状態表示灯(ランウェー・ステータス・ライト=RWSL)とは=牛草祐二さん提供

 1月2日の事故に関して、航空安全会議は1月3日に「緊急声明」を発表、「臆測や思い込みで航空機事故について語るべきではない」と呼び掛けてきた。

 今回、発表した「見解」には、「社会の中で湧き上がった推測や思い込みに端を発して、単なる滑走路誤進入対策が論じられているだけ」など、厳しい文言が並ぶ。

 取りまとめで提案された対策には、見当はずれなものもあるという。「滑走路状態表示灯(ランウェー・ステータス・ライト=RWSL)」の拡充がそれだ。

 RWSLとは、航空機が着陸するために滑走路に接近すると、滑走路に赤い灯が自動的に点灯し、滑走路に進入できない状態であることを地上の航空機や車両に伝えるシステムだ。現在、RWSLは米国の20の空港や、日本では新千歳空港や伊丹空港など5つの空港に導入されているが、取りまとめは国内主要8空港の「全ての滑走路に導入を拡大することを検討すべき」としている。

「われわれは明確に反対です」と、牛草さんは言う。RWSLは滑走路誤進入対策として万能ではないうえ、費用対効果が低いためだ。

「RWSLの導入には1基あたり数十億円の費用がかかる。米国も日本も日常的に航空機などの横断がある滑走路に限って設置しています。誤進入が発生する可能性が相対的に低い滑走路にまで広げるのは、合理的とはいえない」

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RWSLでは事故は防げなかった