面会に来た翔さんにリップクリームを塗ってもらうなつみさん(写真:YouTubeチャンネル「M’s channel」の動画から)

「尽くしているとは思っていません」

 そんななつみさんを、翔さんは今年2月まで自宅で介護してきた。だが翔さんは、「この3年間、介護に疲れたりつらくなったりしたことは1日たりともない」という。

「自分の中でなつみを病人扱いしてこなかったからかな。これまで通りくだらない話ばかりして、二人で笑って過ごしてきたんですよ。なつみは一緒にいるのが当たり前の存在。介護によって自分の時間が削られたことを、犠牲になっているとか尽くしているとは思っていません。彼女は時々『もういいんだよ』って言うんですけど、『その話はやめよう』と打ち切ります」

 翔さんがなつみさんとの再婚を決めたきっかけは、なつみさんが人工呼吸器をつけるにあたり、主治医から施設介護への移行を勧められたことだった。たんの吸引など24時間態勢のケアが必要になることを踏まえた提案だったが、翔さんはこれまで通り在宅介護を続けるつもりだった。しかし、要介護者の介護方針を決める「キーパーソン」は原則、実の家族が担うため、「内縁の夫」である翔さんの訴えは、病院側になかなか聞き入れられなかった。

「なつみも自宅で過ごしたいと願っているのに、このままだと実家の家族の意見が採用されて、施設介護が決まってしまう……」。そう危惧した翔さんは、なつみさんと法的に“家族”となることで、二人の希望をかなえることにした。

「M’s channel」の動画には、婚姻届を手にした翔さんに「俺と結婚する?」と尋ねられ、眉をハの字にゆがめた泣き顔で「うん」とまばたきをするなつみさんの姿が映っている。

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「好き」からさらに進んだ結婚の境地