想起障害は、基本的にはどの年代にも起こり得る。もちろん、脳の上書きが増えれば増えるほど記憶は引き出しにくくなるから、人生経験を積んでいる人、つまり高齢者ほど起こりやすいという。けれども、他の人から「ほら、〇〇さんだよ」と指摘されればすぐに思い出せるのも想起障害の特徴だ。

「もうひとつは記銘力障害で、例えば5分前に聞いたことも覚えられません。こちらは脳のデータに書き込めていないわけですから、認知症の疑いがあります」

 バイデン氏はワシントンで開かれたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議の関連式典で、ウクライナのゼレンスキー大統領を「みなさま、プーチン大統領です」と紹介した。

「すぐに言い間違いに気づき、『プーチンを倒すゼレンスキーだ』と機転を利かせていることからも、認知症の症状とは明らかに異なります」

ウクライナのゼレンスキー大統領をロシアのプーチン大統領と誤って紹介した直後のバイデン米大統領とゼレンスキー氏=2024年7月11日

許されるのは能力による差別

 年齢による偏見や差別のことを「エイジズム」というが、米国では人種差別・性差別を禁止した公民権法に続いて、1967年に「雇用における年齢差別禁止法」が制定されている。

「ですから、米国では露骨な年齢差別はできないことになっています。ところが、日本では年齢差別をしても許される土壌が依然としてある。次期衆院選への不出馬を決めた二階俊博氏に『高齢が理由か』と聞いた記者がいましたが、明らかな年齢差別です。人口減や少子高齢化問題などを巡って『高齢者は集団自決するしかない』と言い放ったコメンテーターも、いまだにテレビに出続けています」

 米国では人種、肌の色、宗教、性別、そして年齢に基づく雇用差別が禁じられているが、和田氏は「一つだけ許されるのは能力による差別」だという。

「入社試験や入学試験で黒人や女性、高齢者を差別してはいけませんが、能力が高い人を選別し、採用することは容認されています。ですから、バイデン氏は高齢だからダメではなく、この4年間の政策とその評価によって審判を受けるべきです」

次のページ
普通の高齢者であればよくあること