都知事選で二位に躍進した石丸伸二氏。注目の記事をふり返る。(この記事は「AERA dot.」が2024年7月18日に配信した記事の再掲です。年齢、肩書は当時のもの)。
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は石丸伸二氏のテレビ番組での発言について。
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都知事選で大躍進した石丸伸二氏の発言が波紋を呼んでいる。
読売テレビ「そこまで言って委員会NP」に出演した石丸氏は、田嶋陽子氏に「少子化対策の具体案は?」と問われ、「一夫多妻制を導入するとか、遺伝子的に子どもをうみだす」と語ったのだった。さすがに「究極的には」と限定し、「やろうとは思っていない」(←そもそもやれる立場ではない)とは言ってはいたが、テレビカメラの前で「少子化対策としての一夫多妻」と口にしたことにスタジオの出演者たちはのけぞっていた。テレビはつくづく怖い。一瞬にして、いろんなものを見せる。
それにしても、石丸氏、ちょっと意外である。選挙直後のメディアインタビューに不機嫌さ丸出しで対応し、メディアの“欺瞞”や “くだらない質問”に苛立ちを隠さなかった彼はメディア嫌いなのだと思っていた。それなのに、今はわりと楽しげにバラエティー番組に出ていて、まるで以前からずっとそこにいた人かのようだ。
本当はYouTubeじゃなくてテレビに出たかったのだろうか。もう少しクールにテレビと距離を保つと思っていたけど、違ったのね。
そういえば小池百合子氏も蓮舫氏もテレビの人だった。2人とも自らのテレビ的賞味期限を的確に理解して転職したように私には見えていたが、石丸氏はこれからテレビの人になっていくつもりなのだろうか。彼はテレビの賞味期限の短さに耐えられるだろうか。
それにしても、石丸氏の「一夫多妻制」とか「遺伝子的に子どもをうみだす」とか、たとえ「究極の話」としても、腹のあたりがずしりと重たい。石丸氏は「100年後、200年後」というふうには言ってはいるが、「一夫多妻制」はともかく、「遺伝子的に子どもをうみだす」という世界は(言葉の意味はちょっとよくわからないけど)、そこまで非現実的なものではなく、もう既にその方向に向かっているのではないか。生殖技術の凄まじい勢いでの発達と、卵子提供や代理母出産などの生殖補助医療ビジネスの発展だ。