7月の会見では、「今ここにいるメンバーに限らず、夢半ばにして夢絶たれた仲間の存在もある」と語り、2年前の世界大会のBC3クラス個人戦で優勝し、昨年亡くなった竹之内和美さんの思いも継ぐと誓った(撮影/写真映像部・上田泰世)

 新ボールへの対応と、フォームの改善。それらがようやくかみ合ってきた。パリパラリンピックの目標を「東京(大会)のときの自分を超える」と掲げる杉村。

「パリ大会は、また新しい杉村のボッチャのかたちを見せていく大会になる。常にチャレンジャーの気持ちで挑戦を楽しんでいきたい」

 ボッチャは相手との駆け引きや2手、3手先を読む頭脳戦、そして1ミリを競い合う繊細な投球技術など魅力あふれる競技だが、杉村はボッチャについて「自己選択と自己決定のスポーツ」と表現する。

「生活においては重度障害者として周囲の人のサポートが必要になりますし、いろんな制限があったり、我慢しなければならないこともあったりするけど、コートに立ったら誰の手も借りることができない。すべて自分の選択と決定の中で競技を行い、自分を表現することができるところがボッチャの魅力の一つです」

 また、もう一つの魅力が、「年齢・性別・障害の有無、国籍の垣根を越えて同じステージで戦える競技」(杉村)ということだ。リオパラリンピックで日本チームが銀メダルを獲得して以降、健常者を中心に愛好者が急増。東京パラでの盛り上がりも受け、企業や大学などでも「ボッチャ部」ができ、健常者が参加できる大会も増えてきた。

「パリでの活躍が日本でのボッチャの普及や強化につながる。そのためにも、結果にこだわって最高のパフォーマンスをパリの舞台で発揮したい」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2024年7月22日号