西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「音楽は苦手だけど」。

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【ときめき】ポイント

(1)私は音痴なので音楽には近づかないようにしてきた

(2)でも、かつてトランペットをやろうと思ったことがある

(3)音痴だと言ったが、実は私にも2曲だけ持ち歌がある

 前回、苦手な食べ物について書きましたが、食べ物以外にも、私には苦手なものがあります。それは音楽です。

 どういうわけか、私は自分のことを音痴だと思い込んでいて、音楽には近づかないようにしてきました。以前、アグネス・チャンさんと本を作る仕事をしたことがあって、中華料理を一緒に食べたりしたのですが、その時につい「私はまったく、音楽には興味がないんです」と言ってしまい、場を白けさせました。考えてみたら、アグネスさんは歌手でしたね。忘れていました。

 ところが、そういう私も、振り返ってみるとまったく音楽と接点がなかったわけではないのです。今の私を知る人が聞くと、びっくりするのですが、学生時代にトランペットをやろうと思ったことがあります。

 うろ覚えなのですが、「○○のトランペット」というようなタイトルの洋画を見て、すっかりトランペットを吹く姿にあこがれてしまったのです。早速、楽器店まで出かけていって、大枚をはたいてトランペットを買いました。1万2千円でした。当時の学生にとっては大金です。

 吹き方がわからないので、御茶ノ水駅近くにあった教室に行きました。先生は初老の男性。

「まずは半音から入りましょう」

 と言います。

「えっ。半音というのは何ですか」

 その私の返事を聞いたときの先生のあきれた表情は今でも覚えています。それを見て、もうやる気をなくしました。その日のうちに、音楽好きの友人に1万円でトランペットを転売してしまいました。もっと、いい先生に出会っていたら、私の音楽の才能は開花したかもしれません(笑)。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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