だが冷静に考えると、これって一言で言えば「威張りたい」ってことだ。人に命令したり見下したり、怒鳴りつけたりできる人間が上であり幸せなんだと。確かに当然そうであるように思えるし、私もかつては何となくそう思っていた。でも今、組織を離れフラットに周囲を観察していると、それってもう本当に救いがたくとことんスットコドッコイな間違いということに気づかざるを得ない。
威張っている人間はただ1人の例外もなく、全員から嫌われている。一昔前は、家父長制やら高度成長やらで、便宜上そのような権力的人間が面従腹背されてきただけのことで、その全てが溶けてしまった今、威張ることはリスク100%でしかない。なのにそうと気づかず、必死に人より上であろうとして自ら孤独の穴にズボッと落ちている男性の多さと言ったら! この深刻に滑稽な勘違いの温存は、全くもって誰の利益にもなっていないのである。
※AERA 2024年7月15日号