ときは2019年。「私」こと前島トリコは45歳。結婚歴なし、子どもなしのフリーターである。ネットに逃避していたが、あるマンガを読んでショックを受け、〈人生は一度だけ。なのに私は無為に過ごしてしまった〉と思ったトリコは睡眠薬をひと瓶飲んで自殺を図った。目が覚めると、そこは1989年1月。バブル真っ只中の渋谷だった。 樋口毅宏『ドルフィン・ソングを救え!』はそんな設定ではじまる虚実ないまぜになっ…

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